この時期になると毎年必ず思い出すことがある。
仕事が一段落してこのまま年越しかなという年の瀬。
一つの電話。内容は連絡がなかった息子が亡くなっていた。その特殊清掃をお願いしたい。と。
また、「北海道からの移動になるから作業までに数日猶予が欲しい」と。
天気予報では北海道は寒波が来ており、移動は容易ではなかった。この時点でお父さんの気持ちの大きさを知った。
調整を行い現場入り。
お父さんは「現場を見ることができない。ただ、近くのホテルにいるから何かあったら連絡してほしい。希望としては息子の身につけていたものを何か一つ、残してほしい」ということだった。
少々荒れた部屋には、退職したのか寄せ書きの色紙があった。
部屋の状況から仕事の忙しさが伺えた。
クローゼット前の体液の広がり方から死亡理由は容易に想像ができた。
そしてインターホンの赤色の点滅に気がつく。再生するとそこには救急隊員の決死の表情が映っていた。
誰もが望まない現実がそこにはあった。
一通り作業が完了し、数枚の写真と、よく履いていたであろうスニーカーを残すことにした。
お父さんに渡すとギュッと抱きしめ、頭を下げていた。
震える肩から、その気持ちを察することができた。
そして年明け。一通の手紙。お父さんから感謝の手紙だった。
息子への愛情と、自分がどんな状況に置かれても礼儀を忘れない姿勢に自然と背筋が伸びる出来事だった。

ゴミ部屋、特殊清掃、遺品整理