初めての特殊清掃は内容は大したことがなかったが、いつまでも忘れることのできない内容でした。
場所は埼玉県内の団地。
ただゴキブリを掃除機で吸う。それだけの作業。そのゴキブリさえも死んでいる。
老老介護の成れの果ての部屋だった。
住んでいたのは老夫婦。
旦那さんが寝たきりの奥さんの介護をしていた。
しかしある日、旦那さんが急性心不全で倒れると寝たきりの奥さんはそのまま衰弱死せざる得なかった。
そしてその亡骸はゴキブリの餌となった。
言葉を失った。しかしそれが現実であると受け止めるしかなかった。
何百匹といるゴキブリを掃除機で吸い終わると、その部屋には何事もなかったかのような本当に何もない光景が広がった。
この先もこの部屋には誰かが住み、この部屋は住人の人生模様を見守り続ける。
そう考えると部屋は得体の知れない生き物のような気がしてならなかった。